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鉤歯と義歯床接触部位の設計


佐々木純二の「義歯の苦手な歯科技工士・歯科医師のためワンポイントレッスン」①鉤歯と義歯床の接触部位の設計

部分床義歯を作る際に、考慮しなければいけないポイントはたくさんあります。今回は鉤歯と義歯との接触の仕方のお話です。義歯の装着を邪魔するもの(困難にするもの)には天然歯の豊隆、頬舌方向、あるいは近遠心方向への歯の傾斜…等があります。過去には、健全な歯を補綴することにより装着方向に平行な面を作り、計算されて美しい義歯がもてはやされた時代もありました。その後、健全歯を扱い過ぎることによるデメリットが明らかにされ、今日では「できるだけ歯を削らない。」方法にシフトしてきています。

歯科技工士はサーベヤーという器械を使って、義歯の装着方向を決定し、患者さんの口の中にスムーズに入るように頑張っています。

この際に、多くの技工士さんが見落としているポイントがあります。それは、鉤歯と義歯との接触の仕方です。

右上5,6に双子鉤が、入っている写真です。写真では、分かりにくいのでイラストで説明します。

このように5近心のコンタクトポイントを越えて頬面ぎりぎりまで床を歯に密着させて作っていませんか?

そうなると、どのようなことが起こるか考えてみましょう。5近心面と義歯床が陥凹面で密接することにより、サーベヤーで決定した義歯の装着方向に対し、捩れた装着方向を作ります。つまり、鉤歯の数だけ異なる装着方向を作ります。これが、クラスプを教科書通りに作ったら、義歯が入らない理由です。若手の技工士さんは、この現象に対しアンダーカットを浅くする(アンダーカットゼロもあり)という逃げの方向の対策を取り、それがさらに義歯の質を低下させています。

5鉤歯との接触は写真の黒いラインまでとして、そこより頬側を鉤歯から離し凸面に仕上げる。つまり黒いラインより外側は、義歯の外側面(床研磨面)として処理する。そうすればサーベヤーによる装着方向に対し遊びができて、装着を妨げなくなります。しかも、凸面カーブで外形を作り、コンタクトポイントより内側は鉤歯に密着しているので、食片圧入もありません。

実際に、最初の写真の状態では、義歯は所定の位置まで入りませんでしたが、この処置だけでスムーズに装着できました。